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BUBUがお届けする連載企画 “ナレッジ” | Showcase.68「シボレー・コルベット Z06 × 木下隆之」

第68回目もレーシングドライバーの「木下隆之」さんにご登場いただきました。

BUBUがお届けする連載企画 “ナレッジ” | Showcase.68「シボレー・コルベット Z06 × 木下隆之」

文/プロスタッフ写真/内藤 敬仁

僕がGMのテストコースでコルベットの開発陣に質問攻めにあった理由

現行のR35GT-Rがデビューした直後ですから2008年頃だった思いますが、縁があってアメリカ本土のGMテストコースに招かれたときの話です。場所はマイアミにほど近いテストコースでした。

そこでは新型コルベットの開発が行われていました。そこには多くの開発メンバーがおり、その場に僕が到着するや否や、僕は機関銃のような激しい質問攻めにあったのです。

「GT-Rのあのタイムは本当なのか?」
「イエス」
「それはありえない」
「GT-Rは最速タイムを記録したのです」

実は当時、僕はR35型GT-Rの開発に触れており、難攻不落なニュルブルクリンクでタイムアタックを経験していました。GMもその頃、ニュルブルクリンクを開発の場として通っていた。ですからGT-Rが記録した世界最速タイムを気にしていたのでしょう。

車両イメージ

コルベットの開発思想を具現化したかの様な現行C8 Z06

そして彼らはこう付け加えました。

「速さはパワーとタイヤのサイズと軽さで決まるのだ。あんな細いタイヤで軽くないGT-Rが最速タイムなどあり得ない」

そうまくし立てたのです。それは彼らの開発の思想そのものですよね。

実際に彼らが開発したコルベットは、ぶっ太いトルクが備わっており、タイヤも驚くほど太い。ブラットフォームはアルミモノコックですから軽量です。速さの方程式に見事に合致しているのです。

それは思想であり社是のようなものですから、最新のコルベットでも例外ではありません。駆動方式はミッドシップに進化しましたが、ここで紹介するコルベットZ06のタイヤはフロント275/30R20であり、リアにいたっては345/25R21なのです。345の幅も、25%の扁平率も、前後異径サイズなのも、超レアな存在です。

搭載するパワーユニットはV型8気筒5.5リッターの「LT6」であり、最高出力は646ps、最大トルク623Nmを炸裂させます。はっきり言って、どんでもないパワーです、それでいて車両重量は1720kgと超軽量です。エンジニアの思想の具体なのです。ですから驚くほど速いことは当然のことです。

車両イメージ

アメリカンV8のイメージからかけ離れた超高回転型LT6エンジン

車両イメージ

アメリカンV型8気筒から想像するのは、あるいはズシズシとトルクを路面にこぼすような低回転トルク型特性かもしれませんが、コルベットのLT6の最高出力は8550rpmなのです。最大トルクも6300rpmですから、レーシングエンジン並みに高回転型なのです。ここまで高回転まで突き抜けるのは、世界でも稀だと思いますね。

それが証拠に、回転計の針は、まるで何かに弾かれたかのようなレッドゾーンまで跳ね上がります。アクセルペダルをオンオフすれば、針は狂ったかのような踊りまわるのです。ですからZ06を走らせるのならば、その躍動感を味わって欲しいものです。

Z06こそが最もコルベットらしいコルベット

コルベットには、クーペモデルだけではなくコンバーチブルも存在しています。ハイブリッドモデルもラインナップしています。ですが僕個人的にはZ06がもっともコルベットらしいコルベットだと思っています。

幸いに、BUBU光岡自動車には現在試乗車が用意されています。¥25,000,000オーバーのスポーツカーをドライブする機会などそうそうあるものではありません。こんな希少モデルのステアリングを握ってもらいたいものですね。

ところで、冒頭で紹介したコルベット開発陣は揃いのジャンパーを着ていました。その背中には、こんなメッセージがプリントされていました。

「MY LIFE IS OVER 200miles」

車両イメージ

【 プロフィール 】

木下隆之(きのした たかゆき)

1960年5月5日、東京都出身。日本のレーシングドライバー、作家、自動車伝道師。日本自動車ジャーナリスト協会会員。国内外のツーリングカーレースや耐久レースで活躍。特にニュルブルクリンク24時間レースへの挑戦は1990年の日産・スカイラインGT-Rに始まり、還暦を過ぎた2022年時点で参戦回数は日本人ドライバー最多。2022年は『Schubert Motorsport #880 BMW M2CS Racing』にてクラス優勝を果たした。

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