今回のナレッジに登場していただいたのは人気YouTuberのスティーブ・フェルドマン氏(以下スティーブさん)だ。
スティーブさんが運営するYouTubeチャンネル『スティーブ的視点 Steve's POV』は、初投稿からわずか5年足らずでチャンネル登録者数19万人を超えるほどの人気を誇っているのだが、特筆すべきは多くの動画が日本語で製作されていること。仮に動画の舞台がアメリカで、動画中の会話が英語であったとしも、日本語の字幕が付いているという念の入れようで、当然ながらリスナーの多くは日本人となっている。
また、現時点で彼の投稿する動画の大半を占めているのが、クルマやカーカスタム&ドレスアップに関する内容であり、日本のカーガイの間では、スティーブさんは知る人ぞ知る存在なのである。
そんな異色のアメリカ人YouTuberに、この日本で、アメ車を象徴するフルサイズピックアップトラック(しかも日本では正規販売されていないトヨタ製)に乗ってもらった。
編集:今回は東京オートサロンの取材で来日されたスティーブさんにわざわざ埼玉までお越しいただき、BUBUがBCDで輸入したUSトヨタ タンドラ(2018年型クルーマックスSR5 4WD TRDオフロードパッケージ)にお乗りいただいたわけですが、まずは乗ってみての率直な感想をお聞かせください。
スティーブ:正直な感想として、予想よりもアメリカンフルサイズピックアップトラックしてました(笑)。実は僕、タンドラに乗ったのは今日が初めてだったんですよ。いえ、助手席に乗った経験くらいはあるんですが、自分でステアリングを握って運転したのは今日が初めてだったんです。
編集:それは意外ですね。アメリカ人のカーガイって漏れ無くトラック好きだと思っていました(笑)。
スティーブ:トラックは大好きだし、これまで何台も所有してますよ。ただ、今まで自分で買ったのはフォード、シボレー、GMC、ダッジのモデルです。もちろんタンドラやタコマは昔から知ってました。アメリカでもたくさん走っていますからね。でも、僕の中ではトラック=アメリカの自動車メーカーのモデルという意識もあって、トヨタやニッサン、ホンダなどの日本のメーカーのピックアップトラックには全く興味がなかったんですよね。
編集:改めて聞くまでもない質問ですが、スティーブさんは日本車もお好きですよね?
スティーブ:大好きです。好きじゃなければ族車仕様のハコスカやVIP仕様の15クラウンを、わざわざ自分で日本からアメリカに輸入して乗ったりしません(笑)。ただ、僕が日本車の魅力に気づいたのは大人になってからなんですよ。
僕は1991年、21歳の時に大学の夏休みを利用して初めて日本に来て、日本人の友達の家に二ヶ月間ホームステイしたんですが、その時に日本の様々なカスタムカーを見て、日本車や日本的なカスタム&ドレスアップの魅力にハマったんです。でも、それ以前の僕は日本車には全く興味はありませんでした。
マッスルカーフリークだった父の影響が大きいと思うんですが、子供の頃の僕は、大きくて力強いクルマが大好きで、逆に小さくて非力なクルマは嫌いでした。僕が子供の頃、1970〜80年代には、既に大量の日本車がアメリカを走っていたんですが、そのほとんどは小型車で、「小さいしパワーがないし安っぽいし、何であんなのに乗るんだろう?」と思ってたくらい(笑)。
そんな幼少期のイメージもあってか、ピックアップトラックというと、自然とフォードのFシリーズやGMのシルバラード&シエラを選んじゃってたんですよね。
編集:何となく分かります。日本車の魅力は認めても、アメ車の象徴とも言えるピックアップトラックならやっぱり生粋のアメリカメーカー製だろう。と、そんな感じでしょうか?
スティーブ:僕はそこまでではないんですが、愛車に星条旗の小旗を付けて運転しているようなバリバリのアメリカ人の中には、今だに日本メーカー製のピックアップトラックを認めない人も少なくありません。ピックアップトラックというのは、アメリカ人にとってはそれほど思い入れのあるクルマなんですよね。
でも、トヨタがハイラックスの様な小さなピックアップトラックから始めて、T100、タコマ、タンドラと地道に販売を続けてきた成果もあって、現代では日本メーカー製のピックアップトラックは完全にアメリカで市民権を得ています。
今回、僕は人生で初めてタンドラをじっくりと見てドライブしましたが、サイズ的にもパワー的にも不満はとくに感じませんでした。「トヨタ車」という安心感もあるし、タンドラがアメリカで順調に販売数を伸ばしていったのも納得出来ました。
編集:これまで所有したフォードやGMのピックアップトラックと比較してどうでしょう? 良いと感じた部分、逆に悪いと感じた部分を具体的に教えてください。
スティーブ:先に言った通り、サイズやデザインは悪くないと思います。デザインについては人それぞれ好みが違いますが、個人的にはもう少し迫力がある方がいいですね。GMCシエラとか、もっとゴツい方が僕の好みです。一般道を軽く試乗しただけなので、足回りなどの性能までは分かりませんが、運転しやすくて乗り心地が良いし、この辺はいかにもトヨタ車的で良いと感じました。
不満というのとは少し違いますが、自分で買うのであれば、正直パワーはもっと欲しいです。先日、アメリカのディーラーでフォードのラプターに試乗したばかりなので余計にそう思うのかもしれませんが、今回乗ったタンドラのエンジンは良くも悪くも普通のアメリカンV8という感じなんですよね。
あと、シートや装備はもっと豪華な方が好みです。試乗したのがベーシックなSR5なので仕方ないんですが、僕だったら『Platinum』とか『1794 Editin』とかのプレミアムモデルを選ぶと思います。ただ、そうすると金額が跳ね上がっちゃうのが問題ですけどね(笑)
編集:ライバル車のモデルチェンジに合わせて、2014年に大掛かりなマイナーチェンジが施されているとはいえ、2代目タンドラ自体は2007年に登場したもので、基本設計はかなり古いモデルですからね。それを考えると現行モデルはかなり頑張っていると思うんですが、性能的に後発のライバルに劣る部分があるのは仕方ないですね。
スティーブ:ピックアップトラックって、セダンやコンパクトカーみたいな乗用車と比べるとモデルチェンジサイクルが長いですからね。でも、長く生産されたモデルには熟成された安心感みたいなものがあるし、僕自身が何でもかんでも新しいものが良いとは思わない人間なので、モデル末期であること自体は購入の障害にはならないんですけどね。タンドラについては今回の試乗で良さがわかっただけに、ニューモデルを見てみたい気がします。
編集:ところで、スティーブさんは現在愛車を探している最中だと伺いましたが、もう次に買うクルマはある程度決めた感じですか?
スティーブ:久しぶりにピックアップトラックを買うつもりです。それもあって今回の企画のお話を快諾したんですけどね(笑)。
何にするかはまだ完全には決めてはいませんが、現時点ではSVTラプターかGMCシエラの中古車を考えています。最もパワフルなエンジンを搭載したクルーキャブ&ショートベッド。駆動方式は2WDでもAWDでもどちらでもいいんですが、アメリカの中古車マーケットのタマ数を考えたらAWDになる可能性が高いと思います。買ったら間違いなくカスタムします。2WDなら車高を下げて、AWDなら少し上げて乗りたいですね。
編集:なるほど。ピックアップトラックを買うおつもりなのであれば、ぜひ今回お乗りいただいたタンドラをご購入いただきたいところですが、日本に輸入した車両をまたアメリカに送り返すのはさすがに現実的ではないですもんね(笑)。
では最後に、読者の皆様に向けて何かメッセージをお願いします。
スティーブ:『スティーブ的視点 Steve's POV』では、これからも変わらずクルマ関連の動画を取り扱っていきますが、それとは別にもっと日米の文化を比較するような内容の動画も増やしていきたいと考えています。また、アメリカ人向けに製作している方のチャンネルでは、アメリカ人の知らない日本独自の職業を紹介するような動画も製作したいですね。
僕は本職が別にあるアルバイトユーチューバーですが、これからも楽しい動画をどんどん製作したいと思っていますので、クルマ好きの方はぜひチャンネル登録をお願いします!
スティーブ(Steve Feldman)
1970年10月18日生まれ。ニューヨーク出身。ロサンゼルス在住。日本語で車関連(スーパーカー、クラシックカー、カスタムカーなど)、健康関連、日米文化の比較などを紹介するYouTubeチャンネル『スティーブ的視点 Steve's POV』を運営。本職は不動産業で、それ以外にもビジネスコンサルティング、通訳、翻訳なども行なっている。流暢に日本語を話す大和魂をもつ面白いアメリカ人。