あいかわらずドイツ車人気の続く日本では、輸入車の上位4位までをドイツブランドが占めている。メルセデス・ベンツ、BMW、フォルクスワーゲン、そしてアウディと言ったように。
が、その中にあって、孤軍奮闘する非ドイツブランドがある。ジープだ。2013年以来6年連続の増加で、昨年はなんと1万3360台を販売した。これは前年比16.3%の増加となる。でもって、それに大きく貢献したのがラングラー。JK型からJL型に11年振りにフルモデルチェンジしたこいつが、4873台を稼いだ。かつて年間500台前後を行き来していたマニアックなクルマが今まさにメジャー路線へと動き出したのである。
商品力もそうだが、販売好調の理由にはディーラーも一役買っている。今年1月の段階で販売拠点は全部で80店。そして順次新しいCI(コーポレートアイデンティティ)にスイッチしているのだ。ブランドを基調にシックな色使いをしながら、クリーンなイメージのつくりは好印象である。また、新規オープンもそう。今回取材させていただいたジープ西東京もそのひとつで去る3月20日にオープンしたばかりのショールームとなる。
ジープ西東京のショールームはとにかく広い。聞けば屋内ショールームの広さは東日本で一番だそうだ。確かに、屋内のショールームに全モデルがすっぽり入っているのはすごい。しかも、レネゲードは4種類のカラーリングが並んでいる。これなら実車を見比べてカラーをオーダーできるだろう。ありがたい。
では、新規オープンのジープ西東京のメリットは広さの他に何があるのか。店長の伊藤さんに聞いた。
「確かに広さは自慢ですね。でもそれだけではありません。新規オープンなので、在庫をたくさん用意しています。初めから何ヶ月待ちではお客様に申し訳ありませんから。また、我々はBUBUグループなので、全国で対応できます。それにジープ富山に続く二店舗目ということもありジープに関するノウハウがあります。」
これは心強い。BUBUグループならではの強みがここで生かされているとは。
続いて、人気のモデルはどうなのか?傾向を聞いた。
「オープンからの数字で判断すると、ラングラーは全モデルの販売台数のおよそ半分。そしてそのほとんどがアンリミテッドです。ショートボディは1割くらいでしょうか。あまり需要がないので、オーダーから納車まで半年くらいかかってしまってます。そのほかではレネゲードが人気です。女性人気が高いですね。オレンジとか評判です」
やはりアンリミテッドの人気は相当高そうだ。となると、次に気になるのは、エンジンの種類とボディカラーである。
「アンリミテッドの7割が3.6リッターV6で、残り3割が2リッター直4ターボです。ボディカラーのベスト3は、1.グラナイトクリスタルメタリック、2.ブライトホワイト、3.ブラック、です。グレードはサハラが一番人気で、ルビコンは3ヶ月で一台のみでした。」
ということなので、伊藤店長にお願いしてデモカーを少しばかり走らせてもらうことにした。用意されたのは、当然3.6リッターV6のサハラ、色はブラック。かっこいい!
JLラングラーはこれまで何度がそのステアリングを握っている。オフロードコースでも一般道でもテストドライブをした。かつてJKラングラー日本導入の際、ディーラーマン向けの技術解説書を手掛けたことでその進化に驚いたことがあるが、JLラングラーの進化はそれを軽く上回っている。その昔、TJやYJラングラーを乗り回していた経験から鑑みると、別物である。
何が大きく違うかというと、基本骨格。プラットフォームの剛性を高めサスペンションを柔らかくセッティングすることで、乗り心地がよくなっている。“しなやか”とまではいかないが、これまでのように段差でお尻の下から突き上げられるような衝撃や細かいピッチングは激減した。かなり普通に乗れちゃう。
それでいて、ダッシュボード周りなどワイルドな演出がありジープらしさは保たれるのがグッド。ここが今日的SUVになってはいけないのをジープの開発陣は知っているようだ。それが世の中のニーズってもんである。
エンジンは街中と高速道路だけの日常使いであれば2リッター直4ターボで十分。自動車税とか燃費を考えるとその優位性は揺るぎない。が、オフロードをしばしば楽しむような使い方をするのであればV6の方がしっくりくる。アクセルを踏み込んだ時のトルクの出方がポイントだ。グイッとタイヤを半周させる力強さがオフロードドライブでは必要。頼り甲斐を強く感じる。
なんてことを頭に思い描くと、やはりルビコンの存在が気になる。個人的にはこちらが好み。ジープジャンボリーにもジープの開発にも使われるルビコントレイルをイメージさせる名前だ。過去に二度ルビコントレイルを訪れ走っているだけにそのすごさを知っている。兎にも角にも前後のデフをロックできたり、スウェイバーをリリースできたりするのは機能的だ。最終的にフロントデフをロックすればなんとかなることもルビコントレイルでは体験した。それと、標準でマットテレインというも魅力。見た目も機能的にも必須だ。後から履き替えさせなくて済むんだから経済的である。
というのが今回のジープ西東京探訪記。久々にジープ愛が目覚めそうだ。僕の主張は“ジープはスーパーカー”ということ、イタリアのエキゾチックカーとは別世界の異次元をジープは味合わせてくれる。
九島辰也(クシマ タツヤ)/ モータージャーナリスト兼コラムニスト
1964年生まれ。東京・自由が丘出身。外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV/ヨーロピアンSUV&WAGON(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長、フリーペーパー「go! gol.(ゴーゴル;パーゴルフ刊)」編集長を経験。現在はアリタリア航空機内誌日本語版「PASSIONE(パッショーネ)」編集長、メンズ誌MADURO(マデュロ)発行人・編集長をつとめる。
また、傍らモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、ゴルフ、葉巻、ボートといった分野のコラムなどを執筆。クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。
愛車はフィアット500ツインエア(2013年型)、ポルシェ911カレラ(2005年型)、ダットサンフェアレディ(1969年型)。
日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員/2019-2020日本カーオブザイヤー選考委員/日本ボートオブザイヤー選考委員/(社)日本葉巻協会会員
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BUBU MITSUOKAがお届けするスペシャルコンテンツです。
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