約1年前の2022年12月、ラングラーに駆動用バッテリーと電気モーターを搭載したモデルが日本で発売になった。それが今回スポットライトを当てるラングラー・アンリミテッド・ルビコン4×e(フォーバイイー)。ラングラー初のプラグインハイブリッドモデルである。電動化の進む自動車業界だが、「ついにここまで来たかった!」と言うのが率直な感想だ。
すでにレネゲードにプラグインハイブリッドモデルが存在するとはいえ、こんなに早くラングラーに追加されるとは意外。きっとあえてアイコニックなモデルに電気モーター搭載車を登場させることで、ジープブランド全体の電動化をイメージさせる目論みだろう。客観的に見れば、電動化と一番対極にあるようなブランドである。
パワートレインは2リッター直4ターボガソリンエンジンと2基の電気モーター、それと床下に敷き詰められる350Vのリチウムイオンバッテリー、8速ATのギアボックスで構成される。
電気モーターのひとつは低フリクションでのエンジンスタートと回生用に、もうひとつはエンジン駆動のアシスト用に使われる。もちろん、100%電気駆動のEVモードがあり、最大42kmエンジン無しで走れるのも特徴のひとつ。環境対策として採用される。確かにルビコントレイルで行われるジープジャンボリーに幾度か参加したことがあるが、大自然の中での排気ガスゼロ走行は意味がありそう。イメージ的にもかなりグッドである。
そんなラングラー・アンリミテッド・ルビコン4×eに久しぶりに乗った。とはいえインポーターの広報車ではなくディーラーの試乗車なので、近くの公園までの道のりを往復した程度だ。が、以前にテストドライブしたままのかなりいい印象。モーターがエンジンドライブに介入する違和感はなく、とてもスムーズに気持ちよく走る。アクセルに対するレスポンスはよくストレスがないのがいい。これならガソリンエンジン車からの乗り換えも躊躇なく行えそうだ。しかも加速は走行中のモーターのアシストもあってかなり速いことも付け加えておこう。V6エンジンだけのモデルよりもスピード感はあるだろう。
オフロード走行に関しては4×eでそういったコースを走ったことはないが、“ルビコン”であることからすれば文句の付け所はないはず。センターとリアデフはもちろん、フロントデフまでロックできる機構になっているし、スウェイバーまで操作できるのだから恐れ入る。巷に多く見かけるカタチだけのオフローダーとは違う。なんたってマッドテレインタイヤを標準装備しているのだから一目で別物なのをご理解いただけるだろう。購入後にタイヤを履き替える必要がなのだから都合がいい。
ただ無邪気に褒め称えるわけにはいかない。唯一気になる点がある。それは価格。1030万円のプライスタグは思わず後退りしてしまう。1000万円のボーダーを超えるか超えないかで印象は相当違うのが正直なところだ。
だが、登録するエリアで異なるが、国や地方自治体からの助成金があることを忘れてはならない。ざっくり50万円から100万円近くの補助があると考えていいだろう。それに残価設定プログラムなどローン方式もいろいろ。そこを駆使すれば少しばかりハードルが下がる気がする。さらにいえば、プラグインハイブリッドシステムは燃費の面でランニングコストが抑えられるのは確か。そこを鑑みれば同価格帯のガソリン車よりもメリットは感じられることだろう。もとより、他の輸入車同様円安の為替レートもこの価格には大きく影響している。
撮影後お借りしたジープ西東京へ戻ってから少し話も伺った。それによるとラングラー・アンリミテッド・ルビコン4×eを含むラングラーは2023年モデルがまだあるので、比較的早く納車ができるそうだ。長期納車が多い輸入車の中でこれは大きなメリットだろう。
少し話がズレるが、もしプラグインハイブリッドにこだわらないのであれば、限定車のチェックをオススメする。全国限定100台のラングラー・アンリミテッド・フリーダムエディションや、300台限定のラングラー・アンリミテッド・サハラアルティチュードなど充実した装備のお買い得モデルを見つけられる。撮影時もショールームにそのフリーダムエディションとサハラアルティチュードが一台ずつ飾られていた。限定車をホームページや営業の方の説明だけでなく実車をリアルに見られるのは嬉しい。どんなメリットがあるのか自分の目で確かめられるからだ。情報によると2024年モデルは小変更にとどまるようなので、即納車できるこのあたりのモデルは間違いなく狙い目となる。
と言うことで、今ラングラー・アンリミテッドに再注目。本格派オフローダーの迫力を肌で感じちゃってください。それにしてもルビコン4×eのボディカラーは悩ましい。ブラックで全体を黒にするのもカッコイイし、ブライトホワイトで爽やかに乗るのも気持ちよさそうだ。もちろんアイスブルー系のアールも捨て難い。なんて悩んでいるのが楽しかったりするんだけどね。これもラングラーの醍醐味だったりしたりして。
九島辰也(くしま たつや)
モータージャーナリスト兼コラムニスト/日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員/2019-2020日本カーオブザイヤー選考委員/日本ボートオブザイヤー選考委員/(社)日本葉巻協会会員。
外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV/ヨーロピアンSUV&WAGON(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長、フリーペーパー「go! gol.(ゴーゴル;パーゴルフ刊)」編集長、アリタリア航空機内誌日本語版「PASSIONE(パッショーネ)」編集長、メンズ誌MADURO(マデュロ)発行人・編集長などを経験する。2021年7月よりロングボード専門誌「NALU(ナルー)」編集長に就任。傍らモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、ゴルフ、葉巻、ボートといった分野のコラムなどを執筆。クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。
A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。