本国では中古車に1000万円を超える値札が付くほど価格上昇中
だからこそすでにお持ちの方は大切に扱うべし!
文/石山 英次写真/古閑 章郎
例えば7リッターV8エンジンを搭載したシボレーコルベット Z06やシボレー カマロ Z28は、本国における中古車市場においていまだに高値安定を維持しており、入手することが難しい。
というか、個体の数自体はある。だが、価格が高い。だからその高い価格を承知で購入することは可能であるが、あえてそれを日本に直輸入するショップはないということである。
同様の事態がシェルビー GT350にも及んでいる。シェルビー GT350は2020年をもって生産終了となったわけだから、ある意味数ヶ月前の車両であるのだが、すでに価格上昇中で、その値は異常なほど上がり続けている。
聞けば、「本国で1000万円以上の値札を付けた車両が多くなり、ちょっと手がつけられない状態になってます(当然そういった車両を日本に直輸入すれば、それプラスαの値札が付けられることになるわけだから)」
シェルビー GT350とは、魅力的なエンジンが搭載されたマニュアル車のみのスペシャルマシン。その5.2リッターV8NAエンジンは526hp、最大トルク429lb-ftを発生させ、レブリミットが8250rpmと、アメ車としては異例の高回転型ユニットであった。
しかもそのエンジンは専用設計かつ手組みであり、そうした諸々の個性が逆に仇となって生産終了となってしまったわけだが、当然これほどのマシンの誕生は今後なく、だから希少価値が高く、異常なほどの価格上昇が起こっているのだろう。
シェルビーGT350は、フロントセクションの一部にカーボンパーツを使用し、軽量化と高剛性を実現している。車重は1700kg弱。この手のアメ車としては非常に軽い(チャレンジャーは2000kgを超える)。
なお、GT350のフロントマスクがマイナーチェンジ前のデザインをずっと採用しているのは、フロントフレームの一部にカーボンパーツを使用しているのが一因。要するに変えたくても変えることができなかったというもの。
そしてV8NAエンジン。ベースとなるマスタングのV8エンジンも惚れ惚れするほどの感覚性能の持ち主である。
それは速いとか遅いとかいうものではなく、エンジンが吹け上がっていく際に盛り上がるエンジンサウンド等の素晴らしさであって、だから個人的には常にMT車推しを続けている。
で、GT350は、そういったマスタングの素晴らしさに輪をかけて刺激的かつダイナミックであり、クルマ好きの琴線を激しく揺さぶる。
個人的には過去3度ほど試乗させていただいているが、とにかくV8エンジンのサウンドとフィールが最高であった。
回転上昇と共に力がみなぎり強烈な加速をうみ、タコメーターの針が勢いよく上昇、それに比例して排気音が俄然大きくなる。
回転振動は大きいが、吹け上がりの刺激や気持ちよさをこれほどまでに感じさせるエンジンはなかったし、そうした最高フィールのNAエンジンをMTでダイレクトに操れる感覚性能の高さはアメ車随一であると今なお思う(ちなみにこの時もマックス6000rpm程度しか回していない)。
そんなGT350の実車は、2018年型5100キロ走行車。ボディカラーはブラックであるが、ブルーのレーシングストライプが非常によくマッチしているし、雰囲気がめちゃくちゃ良い。
加えてマグネライドサスペンションと19インチホイールの組み合わせに車高も低く収まり、その19インチホイール内に収まる巨大なブレーキローターがこのクルマの全性能を物語る。
これ以前に撮影したチャレンジャーのブレーキローターも大きかったが、GT350のそれはチャレンジャーとは比較にならないほどデカイ。要するに、「攻める前提のマシン」であるという証左だろう。
近年のフォード、特に2000年以降のフォードは、数年に一度くらいの割合でめちゃめちゃ気合の入ったモデルを誕生させてきた。それは復刻モデルとかそういった類のものではなく、パフォーマンスに振ったマシンのこと。
例えばフォードGT、旧シェルビーGT500、そして今回のシェルビーGT350である。
ということで、時代が進んでも価値が下がらない別格な存在。中でもGT350の価値は計り知れず、今後も価値の上昇が続くと思われるから、取材車は非常に貴重な存在であると思うし、すでにGT350にお乗りの方は大切にすべきである。