「ブリット」「シェルビーGT350」に変わる走りの存在
ファイタージェットグレーと6速MTのレアな組み合わせ
文/石山 英次写真/古閑 章郎
当時の流れを整理すると、2015年に登場したマスタングは、2018年にマイナーチェンジを実施。その時点でフェイスリフトが行われエンジン関係にも微調整が入り、そしてミッションが6速ATから10ATへと進化している。
翌2019年に「ブリット」が登場するが、2年間の限定モデルであったから2020年で生産終了する。そしてもう一台、2016年にデビューしていたシェルビー GT350が、同じく2020年で生産終了となった。
で、マスタング GTをベースに開発されていたパフォーマンス系の派生モデルが全ていなくなってしまった翌2021年に満を持して登場したのが「マッハ1(MACH1)」である。
フォード的には「マスタング GTとシェルビー GT350との間を埋める存在として開発した」ということで、パフォーマンスに関しても「ちょうどその辺りのレベル」が目指されている。
ベースとなったのがマスタング GTだから5リッターV8を搭載しているが、GTの460hpに対して、マッハ1は480hpを発生させる。
これは、インテークマニホールドやオイルフィルターアダプター、オイルクーラーなどをシェルビー GT350のパーツを使用することでパフォーマンスを高めている(最大トルクはGTと同じ420lb−ftのまま)。
これに組み合わされるミッションは6速MTと10速AT。6速MTには、マスタングとしては初となるレブマッチ機能が付き、これまたGT350用のオイルクーラーやマスタング GT用のツインプレートクラッチ、ショートストロークのシフトレバー等が採用されたことで、「走り」に対するMT車の性能がこれまで以上に上がっている。
くわえて、より剛性の高いステアリングシャフトを使用し、足回りのスプリングやダンパー、電動パワステ、ブレーキ等はGTのハイパフォーマンス仕様のものを採用。
また、リアのサブフレームや各種コントロールアーム類、タイヤはシェルビー GT350用を使用しているから、マスタング GTのさらに上をいくハイパフォーマンスを実現しているのがよく分かる。
こうした土台を覆うボディには、基本、空力を徹底的に追求したエアロが全域に採用されている。アンダーカバーや大型リアウイングがダウンフォースを増やすとともに、各部の冷却にも寄与している。
さらに、お決まりの、というわけではないが、グリル内に収まる丸型ライトを思わせる意匠等は、初代マッハ1を想起させ、ボディサイドに貼られるストライプは初代マッハ1へのオマージュという。
ということで実車。2021年型のマッハ1であり、走行約1,000キロの極上中古車である。
まず、ボディカラーのファイタージェットグレーが素晴らしくいい。それにオレンジのブレーキキャリパーやマッハ1のデカール類が抜群に似合っており、見た目の印象は明らかにレーシーだ。マスタングといえば「走り」であるだけに、こういった加飾は大歓迎だろう。
しかも走行1,000キロが示す通りの恐ろしくクリーンなコンディションであり、「まるで新車」と言われても納得しそうなほど各部が美しい。
この車両は6速MT車であるから、MT拒否症の方には敬遠されるかもしれないが、実はそんなことは全くなく、レブマッチ機能が付いているから加減速によるシフト操作でギクシャクすることはほとんどない。
逆に積極的にシフト操作が楽しめる仕様であるから、多くの方に楽しんでもらえるはず。ちなみにMTシフトは、非常にストロークが短く超スポーティなミッションであるから、余計に楽しく感じるはずである。
プラスしてエンジンが大排気量V8NAエンジンなのだから、すべてを操作して気持ち良くないはずがない。それでいてシェルビー GT350ほどスパルタンではないから日常的にも十分使えるし、非常に良い選択肢と言えるだろう。
こうしたマスタングの各種ラインナップを、いわゆる直4モデルのMT車からマッハ1に至るまで、今もフルで扱っているのはBUBU横浜店だけである。もうじき入荷する直4エコブーストモデルのMT車、コンバーチブル、V8マスタング GT、そのコンバーチブル、限定車のブリットも系列店に展示されている。
すなわち、他店ではあまり売られていないマスタングの各種ラインナップを下から上まで扱っているのは、もはやBUBU横浜店のみである。しかも店舗に実車を展示し販売しているから、実車そのものを見て納得して買える=そういった車両全ての面倒を見ることができるという実力の裏返しでもある。
そんな横浜店に展示されているマスタングマッハ1は、現在市場に出ている最高レベルの中古車と言えるだろう。