旧型マスタングの後期型6速MTモデル
一度くらいは大排気量V8NAエンジンに乗っておきたい
文/石山 英次写真/古閑 章郎
こちらも同じくマスタング。2018年型だから旧型後期モデルのBCD認定中古車である。
走行距離は1万4,000キロでコナブルーの個体よりも少ないという違いがあるが、それ以上の大きな違いがマニュアルミッションであるということ。
前回のコナブルーの個体は10速ATであり、このホワイトの個体は6速MT車。プラスしてブラックアピアランスパッケージ装着車であるから各部にブラックの装飾が加えられマスタングらしい雰囲気を発している。
それにしてもさすがはBCDである。マスタングはすでに新型モデルが登場しているから旧型マスタングの個体はどんどん減っている。
さらにアメリカからの輸入によってV8モデルが増えることは日本ではほぼないから、V8モデルが複数台展示されていること自体が珍しい。
正直、どこかで「直4でもいいかも」といったある種の諦めみたいな気持ちも持っていたくらい、V8マスタングを見つけることが今難しいのだ。
だから驚いた。しかも10速ATよりも数段レアな6速MT車が展示されていることに。
個人的にはMTアレルギーがないから、10速ATモデルの楽しさや先進性を知りつつも、操る楽しさを求めMT車を選ぶに違いない。
というのも、クラッチ操作に難はなく、MTのシフトゲートも明確かつショートストロークであるから小気味よい楽しいシフトが可能である。
ダッジ チャレンジャーにもMT車は存在し、そちらも楽しいMT車に違いはないが、マスタングと比較してシフトストロークが若干長めな、いわゆるアメリカ的シフトという特徴がある。
一方でマスタングのシフトはコルベット等のスポーティなそれだから、スポーツカーさながらの雰囲気で乗れるのだ!
今や単純な速さだけで言えば同じマスタング同士でもATの方が速いに違いない。だが、MT車は速い遅いに関係なく、ドライバーの気持ちを高揚させ、刺激に満ち溢れているように感じる。
同じエンジンでも、MT車の方がよりリアルに、そしてよりダイレクトに感じる(あくまで個人的感想である)からこそ、乗っていて楽しいし、あえて選ぶだけの価値はあると思っている。
BCDスタッフに聞くと「日本へ直輸入されたもともとの台数自体が少ないですからMT車は希少ですし、この先の入荷のめどは全く立っていません」
今やミッション問わずこの型のV8マスタング自体が希少であるというから、「MT車がいい」とか「パフォーマンスパッケージ付きがいい」といった希望をほとんど叶えることはできず、ある意味、出た物勝負的なチョイスしかできないということなのだろう。
逆に言えば、前回のコナブルーの10速AT車も含め、これだけの個体が2台並んでいるということ自体が奇跡的なのである。
ということで取材車両である。この個体は2018年型だが、驚くほど状態がいい。レザーシートに使用感を感じる部分が非常に少なく、ミッションもカチッとした剛性感に満ちたものであり、中古車でありながらヤレを感じる部分が非常に少ない。
もちろんBCDの認定中古車であるから、メカニズム的なチェックも適宜行われており、特にフォード専用電子デバイスを使用した確認作業も行えるから、購入後の安心感が非常に高い。
そんな個体の「V8+MT車」なのだから、MT車が操れるマスタングファンにはかなりオススメな個体と言えるのである。
時代を考えれば、2.3リッター直4エンジンの存在の方が正しいのかもしれない。しかも、そちらはそちらで十分に楽しい。だが、ここ最近何度も言っているが、近い将来にV8廃止時代が訪れる。
だからGTに搭載されている「5リッターV8エンジン」も当然ながら存続が危ぶまれているからこそ、アメ車好きなら生涯に一度くらいは大排気量V8NAエンジンに乗っておきたい。
ちなみに、もっと速いのが好みなら、シェルビー GT350やマッハ1といったスペシャルモデルたちに進む手もある。
だが「そこまではいらない」と思うならば、取材個体のようなシンプルなGT+6速MTこそがオススメだと思うし、長く乗れるだろうと考えるのである。