ダイナミックな走りが楽しめるミドル級スポーツカー
GM100周年を記念した限定車 S-リミテッド
文/石山 英次写真/古閑 章郎
コロナ禍や戦争といった社会事変や近年の円安傾向によってここ数年の輸入車の価格帯は一気に上がった。だから新車や高年式のチャレンジャー&マスタングといったアメリカンスポーティカーを購入しようとすれば、かなりの購入資金が必要になる。
しかし、ある程度の年式落ちを覚悟した上でスポーティモデルを探していると、結構な大穴モデルがある事に気がつく。そう、コルベットである。しかもC6だから、二世代前のモデルになる。
C6とは、2005年から2014年まで生産されたコルベットシリーズの6代目モデルである。
現在のコルベットは通算8代目モデルとなりミッドシップに生まれ変わっている。だから、FR最終となる7代目とMR初代の8代目とでは、車名は同じではあるが、まるっきり違うクルマになっている。
そういう意味で現在の中古車市場におけるFRモデルの中心は当然7代目であり、一方で、すでに8代目ミッドシップモデルの中古車も出回っているから、それら2台が市場における人気モデルである。
ということで、だからこそ6代目である!
コルベットは、常にそれ以前のモデルからの劇的変化を経てニューモデルとして登場している。なので、どの年式のモデルにおいてもそれぞれの特徴や逸話があって楽しめる。
例えば、6代目となるC6 コルベットは、それ以前のC5から車体をコンパクト化させていることが最大の特徴であった。
具体的にはC5と比して全高が20mmリ高くなっているが、全長は100mm、全幅は10mm短い。逆にホイールベースは30mm伸ばされているのだが、前後オーバーハングが短くなっているから、C5比で非常に小さく見える。
また、パッケージングも最高で、ミッションをリアに置くトランスアクスル方式を採用することで前後重量配分はフロント:770kg、リア730kgである。
しかもドライバーの体重と65リッターの燃料重量がリアに加わることで、なんと50:50の理想的配分を実現!
くわえてOHVエンジンをフロントに搭載しているから、重心位置がきわめて低い=コルベットだからこその理想的パッケージングの完成である(リトラクタブルヘッドライトをやめたのもこれが理由である)。
だからこそ、その回頭性の良さに驚かされる。
C5と比較して圧倒的に俊敏なフロントノーズの動きはスポーツカーのそれであり、走り出せばボディの大きさをまったく感じさせない。さらにリアの粘りというか安定感は随一だから、これぞコルベットの走りが可能になる。
コルベットは、いつの時代のモデルにおいても、その時代における「最高峰」を目指し、高い運動性能を実現することを目指していたから、上記の走りこそがC6時点における最高峰の走りであり、アメ車ファンならずとも一度は体感してほしいと思うのである。
搭載される6.2リッターV8OHVエンジンは436psを発生させ6速ATと組み合わされる。そして、車重は1600kgを切るのでダイナミックな走りが体感可能だし、個体によってはいまだ当時のミドル級スポーツカーの性能をフルに楽しむことができるだろう。
ちなみに、そんなC6 コルベットであるが、これから中古車を購入しようとした場合、その年代における最高峰に乗れるわけだから、大切なのは言うまでもなく個体の程度である。だからノーマル純正に近い状態の個体がいいし、走行距離だって短い方がいいに決まっている。
で、そんな中見つけた個体が2008年型S-リミテッド。走行2.8万キロのディーラー車。
S-リミテッドとは、2008年にGMが100周年を記念して発売した限定ディーラーモデル。全国30台のうちの一台だからかなりレアと言っていいだろう。
しかもフレーム&FRPボディだから15年落ちの中古車であってもボディにヤレ感が少ない。そして走行距離が少なくエンジンへのダメージがほとんどないわけだから、スポーツカーの定番というか中古車の定番であるタイヤとショックを換えれば十分に生き返る(フレッシュな状態で乗れる)はず。
そして販売しているのは、GMの正規ディーラーであるキャデラックつくば / シボレーつくば。当然、C6 コルベットに対する整備ノウハウがあるので(C6自体も正規ディーラー車であるから)心強い。
この個体の車両販売価格は388万円だというから、安価とは言い切れない。
だが、最新のスポーティ系モデルの700〜1000万円程度という価格帯を鑑みれば、そしてコルベットという稀代のスポーツカーに乗れるということ、しかもディーラー販売によるディーラー車であるということを付け加えれば、本気でほしいと思っている方にとっては、かなり買いやすい個体と言えるのではないかと思うのである。