「ダッジ ラム」から「ラム」に進化し高級感が格段にアップ
BCDの目利きによるコンディション重視の個体
文/石山英次写真/古閑章郎
ここで紹介するラムとは、もとはダッジラムトラックの系譜をたどっていたクルマである。だが、2010年に「RAM」ブランドとして独立したことで、ダッジとは切り離されて「ラム」として現在に至る。
というわけで、まずはダッジラムから。
初代ダッジラムトラックが登場したのが1981年。この時代のダッジラムトラックは販売面でまったく振るわず、フォードやシボレーに対して大きく水をあけられていた。いわゆる不人気車だった。ということで、この年代のダッジラムについて知る者は、日本ではかなり少ないのが実情である。
初代の不人気に伴いモデルチェンジし、1994年に登場した2代目ダッジラムこそが、日本でも爆発的にヒットしたモデルであった。押し出しの強い、アクのあるデザインこそがダッジラム、といわんばかりのフロントフェイスを携えて登場したこの2代目モデルには、ダッジバイパーに搭載されたV10エンジンを搭載したスーパートラックも登場し、日本でのラムトラック人気に火をつけたのである。
そしてその流れのまま2002年に登場した3代目ダッジラム。この3代目には、エンジン、サスペンション、ミッション等が一新され、フロントマスクのグリルが一段と大口径になったのが特徴。
この年代にも、前時代と同様にバイパーのエンジンを搭載した「SRT-10」が登場し、世界最速のピックアップトラックとしてギネスブックにも掲載されている。
余談だが、この時代に登場したトヨタタンドラ(2007-2021)の仮想敵は、ダッジラムだったと言われている。あの当時、トヨタらしくないとも言われた厳ついデザインは、打倒ダッジラムを目標として製作されたのだ。
で、2008年に登場した4代目ダッジラムトラックへと流れは続いて行く。
この2008年に登場したダッジラムの特徴は、「脱トラック」である。基本資質はトラックのままに、乗り心地やハンドリング、さらにインテリアの使い勝手や質感を、まるで乗用車のような雰囲気に仕立てることで、他メーカーとの差別化を図ったのである。
そしてそのために採用されたのが、リアのマルチリンクサスペンションであり、2013年からはグレードによりエアサスペンションを採用している。
ラムトラックは2010年、ダッジブランドから独立し「RAM」として活躍。その流れは続き2019年に5代目モデルへとモデルチェンジし現在に至る。
5代目モデルの特徴は4代目モデルの脱トラックを一層加速させた上質なピックアップトラック。4代目モデル途中からフロントグリルに「RAM」のロゴが直接入り、それは5代目でも継承されラムブランドが強調されている。
そんな2019年にモデルチェンジされた5代目モデルの最大のトピックスといえば「eトルク」エンジン。いわゆるマイルドハイブリッドで、これは3.6リッターV6、5.7リッターV8両方のモデルに存在しているから、計4種類のエンジンが存在する。
が、基本的にeトルクは日本に直輸入不可能だから、3.6リッターV6、5.7リッターV8が対象となり、今回取材したモデルは、5.7リッターV8エンジンモデルとなる。
2020年型 Rebel スポーツ クルーキャブ4×4。走行2万6400キロの個体である。この年代のラムのボディ形状は以下のとおり。
・6人乗車クワッドキャブ+4インチベッド
・5人乗車クルーキャブ+7インチベッド ⇦今回の取材車
・6人乗車クルーキャブ+4インチベッド
一般的に本国でのピックアップトラックは、ハードに使われることが多い。例えば複数台所有していたとしてもファーストカーとして使用されることがほとんどだから距離を走り、走れば汚れキズが付く。
だから中古車としてタマ数は多いが、その中から日本に向けた中古車個体をチョイスしようとすれば、数があっても実際にはかなり難しい。BCDのように自社基準を持っていればなおさらである。
要するに日本人が考える以上に距離がかさんでいる個体が多く(10万キロなんてザラであり)、普通に15万とか20万キロといった距離が刻まれている。
しかも、アメリカには車検制度がないから、日本車のように3年に一度、もしくは2年に一度リファインされることもない。
そんな中から上質な個体を見つけるために、BCDは現地に支社を置き社員スタッフが実際に足を運びBCD基準に基づいた査定のもと仕入れをしているのだが、上記の通りピックアップトラックは難しい。
だが。昨年から日本においてビックトラックの人気がかなり高まっている。実際BCDにも「ピックアップの販売はありませんか」という問い合わせが数多く、水面下でずっと探していたという。
そして日本に上陸したのがこの2020年型ラム1500。ちなみに、このラムに続きラプターの入庫が決まっているというし、今後も定期的にピックアップトラックへの対応を増やしていくということだから期待したい。
さて取材個体であるが、さすがのBCDと言える状態だった。少なくとも取材時に見た限りでは目立つヤレ感がほぼなく、中古車としてのレベルの高さを感じさせるし、現地での使い方を鑑みれば、こちらも奇跡的な個体と言えるだろう。
くわえて、5代目ラムの雰囲気の良さが絶品。一昔前に感じた「トラックベース」という言葉はすでに死語だが、そんなことをも全く感じさせることがないし、室内空間の広さも含め、当時のトヨタタンドラを十分に凌駕するだけの質感が与えられている。
特筆なのがインテリアで、メーター周りのデザインから質感、さらにはセンターコンソールに至るまで、本気でタンドラ以上のものが与えられ、触れれば確実に納得するだけのデザインと質感が与えられている。
くわえて、それら各部の中古車としてのコンディションがかなり良好だけに、まだまだその質感の良さを味わうことが可能である。
だから「SUVに荷台がついた感じ」とも言えなくはないし、個人的には「トラックなのに雑に使うのがもったないな」と貧乏根性丸出しの意見まで飛び出してしまった。
さらに搭載されるエンジンがチャレンジャーと同型の5.7リッターV8だから、走らせれば「アノ音」がするし、ピックアップトラックの車重を考慮してか、パワーもトルク若干高いから不足はほとんど感じないだろう。
・ラム1500
パワー:395hp @5600rpm
最大トルク:410lb-ft @3950rpm
・チャレンジャー
パワー:372hp @5200rpm
最大トルク:400lb−ft @4400rpm
総じて、道具としてのピックアップトラックに乗用車的な質感が伴い熟成が加えられたのが5代目ラムであり、ハイエンドモデルではないオーソドックスなモデルだからこそ味わえる趣があると感じるのである。しかもこの個体ならクリーンな状態で乗れるからなおいい。
最後に。この5代目モデルは、デビュー時期とほぼ同時期に起こったコロナ禍により日本への直輸入数が極めて少ないから乗れば目立つだろうし、販売しているBCDはチャレンジャー等で5.7リッターV8エンジンの整備を数多くこなしているから電子デバイスを含めたアフター整備にも問題はない、ということを付け加えておく。