知っておくべき愛車の装備品と規定値について
基本的な「点検」の重要性に尽きる
文/石山 英次写真/古閑 章郎
いきなりだが自分の乗っているチャレンジャーについては、当然多くの方が知っているに違いない。
例えば搭載エンジンの違いなんかは当たり前だし、そのエンジンの違いによって使用されるエンジンオイルの粘度指数が違っていることもわかっているはずだ。
R/Tの5.7Lは「5W−20」であり、R/T スキャットパックは「0W−40」だからメンテナンス時に使用されるエンジンオイルは当然異なる。
では、装着されているブレーキに関してはどうだろう? これも恐らくだが、わかっている方が多いはず。例えばヘルキャットなんかはブレンボが使用されているのがウリでもあるから、そういうカタログ的スペックから知っている方も多いと思う。
だが。チャレンジャーにはブレンボ以外のブレーキが装着されている年式やグレードがあり、そういった車両たちの消耗やパーツ交換時期はブレンボ装着車と比較して異なる部分が多分にあるから注意が必要である。
で、今回はそういったブレーキに関する注意点とブレーキ、または足回り等を確認する時にタイヤを外す場合の注意点について話を聞いてきた。まずはグレード別の装着ブレーキである。
・シングルピストン :SXT SXT AWD
・デュアルピストン :GT、GT AWD、R/T ⬅︎
・ブレンボ4ピストン:R/T スキャットパック (GT、R/Tはオプション)
・ブレンボ6ピストン:ヘルキャット以上 (R/T スキャットパックはオプション)
ということで、今回の話題の中心は主にデュアルピストンキャリパーを装備したR/Tについてである。
R/Tでも、オプションのブレンボ4ピストンブレーキが装着されている車両もあり、それに関してはあてはまらないが、通常のデュアルピストンキャリパーを装着したR/Tにおいてはブレーキ使用時に振動が起こることがあり、そういった振動を経験された場合には速やかにメンテナンスされた方がいいということである。
メカニックの飯島氏によれば、この現象はR/Tのみならず300C(同ブレーキ装着車)においても同様の事態が起きた車両の整備を行った経験があるという。
ここからは筆者の推測だが、デュアルピストンキャリパーを装備したチャレンジャーはV6エンジンを搭載したGTとV8を搭載したR/Tとなるわけだが、当然パワースペックが異なるわけで車重もR/Tの方が重い=それによってブレーキにかかる負担が大きくなるのではないだろうか、という推測である。
で、飯島氏が説明する具体的なブレーキの症状とは、「振動」である。走行中にブレーキを踏んだ時に振動(異音も少々発生)が起こり、ブレーキング以外では起きないという症状=ブレーキ系の問題という判断になり、それらを検証したという。
当然、その前にタイヤ空気圧やホイールバランス、アライメント、そしてハブベアリング等のチェックを行った上でブレーキ系の問題という判断に至っており、実際のブレーキ各部の確認においては、ローター、パッド、キャリパーとチェック。
で、発見された振動の原因はキャリパー内のピストン固着によるものであった。
そもそもブレーキとは、ペダルを踏むとマスターシリンダーがブレーキフルードを押し、その油圧によってブレーキキャリパーの中にあるピストンを押す。そのピストンの先にはブレーキパッドがあり、パッドがローターに押し付けられることで摩擦が発生し、それによって速度を落とすという仕組みである。
チャレンジャーに装備されているデュアルピストンキャリパーとは、キャリパーの片側にピストンが2つあるタイプであり、その2つのピストンが油圧によって作動しパッドをローターに押し付けるのだが、通常その2つのピストンの動きは同調しているのがポイントである。
だが、今回の症状の場合、その1つ(もしくは2つとも)のピストンの動きが悪くなることで、パッドに加える圧力に変化が起こったり、もしくは1つだけピストンが戻りきらずずっとローターに当たっていたりすることで振動が起こるというものである。
これら症状に対する具体的なアプローチとしては、キャリパー系のオーバーホール、もしくはキャリパーのアッセンブリー交換。その症状の影響によってブレーキローターに何らかの二次被害が及んでいる場合にはローターの交換も視野に入れる必要があるという。
ちなみに、こうした振動等のメンテナンスが必要になる車両は、年式が古い場合や距離を走ったモデルに見られるということだから、やはり基本的な点検の重要性に尽きると言えるだろう(当然ながら早期発見&対処していれば二次被害は避けられるから)。
一方、こうした点検及び確認をするためにタイヤを外した場合には、もしくはこれから冬用タイヤに履き替えるという場合には、そしてチャレンジャーオーナーの中では一般的と言われている前後タイヤのローテーションをする場合には、ホイールナットの規定値というものを理解し、その数値で締めるように注意してほしいとのアドバイスも頂いた。
チャレンジャーのオーナーズマニュアルには記載されているし、またグレードにより数値が変わってくるから、自分の乗っているチャレンジャーの締め付けトルクの数値は知っていた方がいい。
例えば国産車には100Nmや110Nmといった規定値の車両があるというが、アメ車には180Nmが規定値の車両もあり、万が一国産車しか扱ったことのない店舗で国産車流にホイールナットを締めた場合、当然規定値よりも緩く締めているわけだから、何かしらのトラブルが起こる可能性が高まってしまう。
で、取材個体のR/Tの規定値は150Nmだから、トルクレンチで規定値通り締め付け、その後少々公道を走り再度確認をするというのが一般的である。ちなみに左側のタイヤはボルトを緩める動きをするから特に注意が必要である。
また、細かいことを言えば、ホイールナットをカスタムナットに交換している場合、ナット側がトルクに対応していない場合もあるから、注意が必要である。対応していない場合は、当然ナットが緩んだり破損したり、が起こり何らかのトラブルに繋がる可能性がある。
ということで、所有しているチャレンジャーによって求められる整備や対応が異なってくるから、当然そうした見極めが行えるショップで整備対応するのが望ましいと言えるのである。