未だボディ内外装の色ツヤが衰えぬ前期型の超良質車
「あえてこの年式のR/Tが欲しい」と思う方には絶好の一台
文/石山 英次写真/古閑 章郎
現行チャレンジャーは『復刻』モデルと言われており、マスタング同様、過去の歴史的モデルのデザインを現代モデルに投影させている。チャレンジャーの場合、1970年から1971年のたった2年間のみのデザインがベースになっている。
そんなダッジ チャレンジャーは2008年にデビュー、また2015年にモデルチェンジし、そこを境に前期型、後期型と記されるようになった。すでに14年にも及ぶモデルライフである。
で、2008年に登場したチャレンジャーは、1970年モデルをデザインベースにして復刻されている。
一方で、2015年にモデルチェンジした後期型は1971年モデルをベースにしているから、フロントグリルやテールレンズの違いは、そうしたベースモデルの違いとリンクしているのである。
現在、市場の中心となるのは当然後期型であり、徐々にだが前期型の中古車個体の数が減っている。いや、正確には「まともな個体」の数が減っている。
が、そんな中で今、前期型のプチブームが起こっているという。
というのも、2015年以降のモデルに乗られる方が多くなり、さらにコロナ禍等で車両価格が高騰していることから、「それなら安価な前期型を探そう」と、前期型のシンプルな個体を探している方が増えているのである。
だが。そうはいっても8年から14年落ちの中古車である。まともな整備を受けたかどうかもわからず、カスタマイズされた個体も多く、様々な不安要素が多い。「けど、それでもチャレンジャーには一度乗ってみたい」という方が多いのだろう、価格的な障壁を乗り越えるべく前期型への視線が高まっている。
そんな中での取材車である。2013年型R/Tの8,000キロ走行車。最初にプライスボードを見た時は、目を疑った。8万キロ走行の間違いではないか? だが実走8,000キロ以内で価格は568万円というから驚き。
ということで、まずはおさらい。この年代、いわゆる2008年から2014年までのチャレンジャーにおけるV8エンジンのラインナップは以下のとおり。
・R/T:5.7リッターV8
・SRT8:6.1リッターV8
一方で2015年以降のV8エンジンラインナップは以下のもの。
・R/T:5.7リッターV8
・R/Tスキャットパック:6.4リッターV8
・ヘルキャット等:6.2リッターV8スーパーチャージャー
今回取り上げた個体が6.1リッターV8エンジン搭載のSRT8だったら正直、紹介するのを迷ったと思う。というのも、だったら後期型の6.4リッターV8の方が圧倒的に良いから。
現行型の6.4リッターV8はそのパワーのみならず、エンジン内部の精度や質が圧倒的に進化しているから、同じ大排気量NAである6.1リッターV8、しかも走行距離のかさんだ旧時代のエンジンをあえて入手する必要性を全く感じない(それなら無理してでも6.4リッターを買うか5.7リッターを買う)。
プラスして無理にいじられた車両も多く、購入後に大怪我する可能性も秘めている。
一方、5.7リッターV8エンジンであれば話は別である。というのも、このエンジン、前期型と後期型とでエンジンの違いがほとんどない。いや、正確には全く同じ。
だから5.7リッターV8エンジンを搭載したR/Tなら、前期型でも後期型でも同じパフォーマンスやフィールが得られるから、コンディション次第では当然『アリ』だと思っている。
もちろん、後期型には8速ATが組み合わされているから、そうしたミッション制御における大きな変化があるが、実はこの個体、マニュアルミッション車である(笑)。要するにMT車であるから、これまた前期型と後期型とで違いは全くないから、繰り返すがコンディション次第では超レアな個体かもしれないのである。
ということで改めて2013年型R/T CLASSIC。グリル周りやリアテールに違いが感じられる前期型。それでも色ツヤが全く衰えぬオレンジのボディにはサイドストライプが入り、まさにその時代の新車のような佇まい。
また室内はブラックのインテリアだが、当然前期型ゆえ古色蒼然としたインパネ周りの雰囲気が漂う。
メーター内のホワイトメーターが懐かしくもあり、センターコンソールがシンプルかつスッキリしているのが前期型の特徴である。が、瑕疵等なく非常にクリーンな状態が維持されているのが嬉しい。
余談だが、中古車個体を見分ける一つの方法として「インテリアをしつこく見る」という法則的なものがあるのだが、それはインテリアの状態はごまかしがきかないから。
外装はある意味いくらでも補修はきくが、インテリアを修復するのは業界的にはかなりの費用と労力がかかる。だから何かしら手を加えるにしても「そこそこ」の場合が多い。要するに取り繕われたインテリアはシッカリ見ればわかることが多いのだ。
が、この車両にはそうした形跡が微塵もない。極めて自然な状態であり、あくまでコンディションを重視するさすがのBCDである。
というか、この旧時代のインパネを見たのは超久しぶりであるのだが、一瞬にしてその当時を思い出させてくれるほど、デザイン的には古いが、新鮮である。
話は戻るが、インテリアで一際目立つガングリップタイプのシフトノブ。後期型は球体のノブになっているから違いが鮮明だが、個人的にはこちらのガングリップタイプが似合うと思う。
ちなみに、チャレンジャーのMT車にはヒルスタートアシストが付いているから、坂道発進時には自動的にサイドブレーキがかかり、クラッチが繋がった瞬間に解除されるため、マニュアル車の運転に不安がある方でも慣れれば苦も無く走れるタイプ。
くわえて、マニュアル操作のしやすい明確なシフトゲートとストロークタイプであるから、いわゆるアメリカンタイプであり、これまた運転しやすいMTである。
しかも5.7リッターV8エンジンのMT車。これは後期型でも滅多に見られない組み合わせであり、BCDでも「これまでに扱いはあるがあまり多くない」と言われるだけに、「あえて5.7リッターV8をマニュアルで」と思っている方には最高の個体ではないか。しかも8000キロ走行である。
これから思う存分走り回ることも可能だし、コレクション的に大切に保存していくことも可能だろう。なんせ来年にはチャレンジャーの新車生産が終了してしまうわけだから、前期型の良質車の価値も上がるだろうし。
繰り返すが、R/Tなら前期型&後期型で違いがほとんどないから(インパネ&外装の一部)、前期型のクリーンな個体で、しかも現行型R/Tの平均相場価格よりも200万円以上安価な金額で購入することが可能なモデルはまさしくレアなお宝的個体と断言できるのである。