いまさらながらのV8エンジンをMT車で操る快感
レアモデルのブリットもいまならBCDで最速納車が可能
文/石山 英次写真/古閑 章郎
久しぶりのブリットである。日本ではBCD以外ではほとんど見かけない車両だけに複数回の取材になるもまだまだ目新しさを感じる。
個人的も好みで、特にボディ全体がシンプルに見えるのがいい。
フロントグリル内にはエンブレムが一切付かず、ボディサイドにも「5.0」といったバッジ類が付かず、リア周りには「ブリット」のロゴが付くもリアスポの類が一切ないからシンプルイズベストな感じで素敵。一時期流行ったドレスダウン的なカッコ良さがにじみ出ている。
室内は既存のマスタングとほぼ同一だが、ステアリングロゴが変わっていたりシフトノブが白い球体になっていたりと独自性が見えるものの、シートに座った感じはほぼ同じ。
ただし、エンジンをかけた瞬間に明白な違いを感じる。いわゆる刺激的なサウンドである。ちょっとした爆音とも言えるかもしれない。
搭載されるエンジンはGTと同じ5リッターV8であるが若干のチューンにより475hp、最大トルク420lb-ftを発生させる。ノーマルGTが460hpというカタログスペックだから15hp程度の違いだが、一段と野太いサウンドがそれ以上の違いを感じさせる。
今回初めて試乗させてもらったが、想像以上に素晴らしかった。とくにMT車ならではの操作感とV8サウンドがシンクロした瞬間の気持ちよさが最高だった。
あまりにもエンジンサウンドが大きくて、「ちょっと音質加工されているようだな」とも思ったが、それでもリアルV8の心地よさはやはり格別。まさしく劇中車のごとき刺激的なものだった。
このエンジンサウンドを聞くがためにアメ車のV8車に乗る方がいてもまったくおかしくないと思えるほどのものだったし、この「個性」に「MT」とマスタングという「ブランドバリュー」にブリットという「逸話」がつくのだから、このクルマの価値は断然高いと思う。
当サイトではこれまでに複数回ブリットを紹介しているが、そのどれもがマックイーンに関する魅力の話が半分以上を占めていた。だが実際に乗ってみると、そうした過去の復刻モノというよりは、一台の現行マスタングとしての魅力の方が上回っていると個人的には感じている。
もちろん、マックイーン関連に興味を持ちブリットを購入する方がいても全然問題はないが、そうじゃない方にもオススメできる車両と言うこともできる。
グリーンのボディが美しいマスタング。しかも日本に15台もないレアモデル。とはいえ、シェルビー GT350のようなスパルタン&ハード系モデルではなく、至って普通に乗れ、かつV8エンジンをMTで操り快感に浸れるマスタングということで。
それと同時に。なんでしょう、このマスタング、ドレスダウンっぽさがあるからか、モデル年式や歴代何代目といった感じにあまり固執しないというか、気にならない。だから長く乗っても古さを感じさせないような気もするし、流行り廃りを考えずにずっと乗ることが可能な気もする。そういう意味でもオススメだと思っている。
さて、車両の詳細を説明しよう。ブリットとは、映画『ブリット(Bullitt)』(1968年公開)があり、その映画に登場していた1968年型フォード マスタング GT390 ファストバックを現行マスタングにトリビュートした50周年記念限定モデルが、ここで紹介しているブリット。
ボディは、劇中車さながらのハイランドグリーンとブラックカラー(2色)のマスタングGTがベースとなり、搭載されるV8エンジンも同様の5リッターV8ではあるが若干のチューンにより475hp、最大トルク420lb-ftを発生させる。
シャシーは、フロントエアースプリッターを含むパフォーマンスパッケージをまとい、変更されたグリル形状と共に独特の雰囲気を奏でる。
映画に登場した1968年型 フォード マスタング GT390 ファストバック同様にフロントグリル内にはエンブレムが付かず、ブラックのアメリカンレーシング製トルクトラスト5スポークホイールも劇中車を意識したものとなっている。内部には赤いブレンボのキャリパーが光る。
また購入時に装着できるオプションも3つのみであり「ブリットエレクトロニクスパッケージ」(ナビ、運転席とミラーのポジションメモリー機能、アップグレードされたサウンドシステム、側方接近警報付きブラインドスポットシステム)と、「マグネライドサスペンション」、そしてブラックのレザーにトリミングが入った「レカロ製シート」だから、基本、そのままの状態でも十分に満足いく装備になっている。
取材車両は、BUBUさいたまにあった走行1,000キロにも満たない極上モデルであり、「ブリットエレクトロニクスパッケージ」と「マグネライドサスペンション」という2つのオプションが組み込まれたモデルだった。
一方で、BCD横浜にある展示モデルには、「ブリットエレクトロニクスパッケージ」と「マグネライドサスペンション」の他に「レカロ製シート」がついたフルオプションの車両となっているから、ボディカラーも同じで程度もどちらも良好だから、好みに応じて選べば良いと思う。
ちょっとシブいマスタング。大人の男にこそ似合うような気がする。