現代車両はバックアップ電源を使い完全オフ状態にはしない方がいい
DIY交換ももちろん可能だが、若干の注意事項あり
文/石山 英次写真/古閑 章郎
チャレンジャーに乗っているユーザーさんから一通の問い合わせがきた。いろいろ書いてあったのだが、まとめると「チャレンジャーに乗っているが、DIYでバッテリーを交換しても大丈夫か」という内容であった。
要するに一ヶ月程度エンジンをかけることなく置いていたら次に乗った時にエンジンがかからず、そのまま放置の状態が続いているという。その間に一度友人の国産車にてケーブルをつないでもエンジンかからず・・・だったと。
で、そのまま放置してあるために、DIYでバッテリーの交換を検討しているという。
そういったトラブルやメンテナンスに関する問い合わせの連絡は結構あるのだが、我々は編集人であり(笑)メカニカルなことに関しては素人同然のため、代わってBCDスタッフに質問し、バッテリー交換の際の注意事項について取材してきた。
お話を伺ったのはBCDつくばショールームの飯島メカニックである。
まずチャレンジャーに関して最初に認識しておくことは、バッテリーがトランクルームに設置されているということ。だからエンジンルーム内にバッテリーはないのだが、実はエンジンルーム内には「+−」のターミナルが設置されている。
この理由は、バッテリーが弱くなりエンジンがかからなくなった時にジャンプスタートに使うため。
チャレンジャーは、恐らくだが、フロントに巨大なエンジンを搭載しているために、それ以上フロントを重くしないよう重量が嵩むバッテリーをリアトランク内に移設。それによってハンドリングのレベルを維持しようと考えたのだろう。
だが、リアトランクにバッテリーを設置したことによって、バッテリーが機能を果たさなくなった場合、トランクルームを開けることができなくなるため、ジャンプスタートすることができない。だから、そんな場合のためにエンジンルーム内に「+−」のターミナルを設置しているというのである。
で、この部分を使いジャンプスタートを試みて、それが成功すればひとまず動かすことが可能である。
ちなみに、上記のような事例が起きた場合には、できるだけバッテリーを交換した方がいいという。また完全放電させてしまったバッテリーは有無を言わさず新しいバッテリーに交換すべきとも教えてくれた。
それともう一つ。現代車両のほとんど全てに当てはまるのだが、現代車両は車載コンピューター、いわゆるPCMにていろいろなものがメモリーされており、例えば、時計やラジオ、ナビゲーション、シートアジャスター(装備されていない車両は関係なし)、パワーウインドウ、そしてトラブルコード類 etc。
車両はいろいろ学習しており、また購入後の走行使用においても学習し続けており、バッテリーが完全放電してダメになった場合、そういったものがすべてリセットされてしまうという。
なので、まずはそうならないために可能な限りエンジンをかけバッテリーが使い物にならない状態を避けるべきであり、また万が一そうなった場合には、あらゆる必要機能をすべてセットし直さなければならない(セットし直すことが苦じゃなければ何ら問題はない)。
ということで、BCDではバッテリーを交換する際にはバックアップ電源を取り、12Vの電源を流して完全オフな状態にはせず交換作業を行っている。
それにより、メモリー類は守られた状態のまま、バッテリーを新品に交換することが可能になるのである。
以上のようなことから、チャレンジャーの場合、上記写真のようにボンネットフードとリアトランクが同時に開いた状態での作業が確認できる。
で、以下がバッテリー交換作業の主な手順である。
1・まずはエンジンを止めた状態のままボンネットフードとリアトランクを開け準備を開始
2・エンジンルーム内のターミナルにパワーチャージャーを繋ぎ、微弱電源を流す
↑この状態により、電源オフにはならずメモリー類も守られる
3・リアトランク内のバッテリーのターミナルを外す
4・ターミナルを外す場合は、バッテリーの『マイナス端子』から
5・次に『プラス端子』を外す
↑この順番を絶対に間違えないように
6・そしてバッテリーを交換
↑バッテリーのサイズ、ターミナルのサイズetcを間違えると装着できない場合があるから注意
7・取り付けは『プラス端子』から行う
8・次に『マイナス端子』を取り付ける
↑この順番も決して間違えない
9・端子が外れないように確実に取り付けること
以上、終了
さて、上記の交換作業手順であるが、文字にすると簡単に見えるが、実は結構シビアな部分があるという。だから、DIYで交換する場合は注意すべきポイントがあるので気をつけて欲しい。飯島氏に伺ったポイントは以下の通り。
まずは、チャレンジャーに装着されているバッテリーと同サイズの規格のものをちゃんと用意すること。いざ装着する段階になって入らないとか、ターミルナルが装着できないとか、またその逆に小さ過ぎて固定できないとか、そういったバッテリーサイズに関するトラブルが起こる可能性があるから注意。
また、サイズは問題なく、順調に作業を進めた場合にも、バッテリーの『プラス端子』とボディ、もしくは『マイナス端子』を接触させたりするとショートさせてしまう危険性があるため、そういった作業中の危険性に注意することも必要。
ちなみに、バッテリーを交換する際に『マイナス端子』から外すのは、『プラス端子』と工具等を『マイナス端子』に繋がるアース(エンジンルームの金属部分)に接触させてショートすることを防ぐためであるから、そうしたことが起きないような注意深い作業を心がけること。
もちろん、バックアップ電源を取っていない場合は、メモリー類がリセットされているから、そのセットも必要になる。また、最後にDIYでバッテリーを交換した際には、使用済みのバッテリーの廃棄についても考えなくてはならないことを付け加えておく。
ということで、バッテリーに関するDIY交換は可能ではあるが、若干の注意が必要であるということも忘れてはならない。
最後に。諸々取材してみて、たかがバッテリー交換、されどバッテリー交換だな、という思いだった。
だから(あくまで個人的な思いとしてだが)バッテリーの用意から交換、廃棄に至るまで、すべてBCDのような専門店のプロに任せた方がいいと思ったし、なるべく愛車のエンジンをかけ、クルマを動かすことが重要である、と改めて認識したのである。