「アメ車ってエアコンの効きがかなり良い」と筆者は思っているが、皆さんはどう感じています?
考えてみれば、巨大なアメリカ国内だけでもかなりの移動距離があるわけで、そうなれば当然日本以上に過酷な気候の州もあるはずだから(日本人が想像する以上に)、そこを横断するためのクルマとなれば、当然エアコンの容量は大きい。だから日本で乗れば効きはかなり良く感じるはず。
ただし、それは適切な状態が維持されていればの話。例えば、エアコンシステムが完調であったとしてもガスが不足していれば効きは悪くなったりする。
というのも、エアコンガスはエアコンシステム自体が完調でもほんのわずかとはいえ抜けていくことがあるからである。
BCDはそのことを理解しており、仕入れた車両が販売される時点で全車エアコンガスのチェックを行っているという。今回その作業を確認させてもらうことで、作業理由等を教えてもらったのである。
まず、エアコンガスには従来のR134aガスと新冷媒R1234yfガスが存在しており、年式により混在しているのが現状である。自分の愛車のガスがわからない場合は、ボンネットを開けるとシールが貼ってあるから、そこで「対応ガスと量」が確認できる。
で、従来のR134aガスの場合はチェック可能なショップは多いが、新冷媒R1234yfガスの確認や補充が可能なショップは非常に限られるというのが大きな問題である。
正直、それができないショップは「どうやって車両を納車しているのだろう?」と思わずにはいられないが、中古車を販売する場合はエアコンガスは必ずや確認すべきポイントの一つである。
というのも、「例えばエアコンガスの規定量の下限が700gとします。でも実際にガスの計測をすると680gとか660gとか、規定量を下回っている車両が意外に多いのです。仮に新車でも規定値の8割程度しか充填されていない車両もあったりするくらいです」
とはいえ、そんな状況は予測可能である。特にアメ車の場合は。というのも日本車と異なり車検制度がないからである(新車の場合は製造工程での差になるのだろう、笑)。すなわち、そういう国のクルマを扱う場合は、それ相応の対応をしていく必要があるということである。
BCDが納車前に必ずやエアコンガスの容量をチェックし、規定値を下回っていた場合は補充し納車しているのは、上記のようなことを理解し、またそういった適切な対応を怠っていないからである。
ということで、作業を確認させてもらった。使用される機器は、KONFORT700シリーズの最高グレード780R。この780Rは、従来のR134aガスに加え、新冷媒R1234yfガスにも対応しており、それぞれのエアコンシステムの保守点検とガスの再充填を行なうことのできる1台4役の装置と言われている。
まず、780Rに車種の設定を行う。780R内には最新の車両情報が入力されている。そして車両のエアコンシステムの配管、高圧側と低圧側につなぎ、スイッチオン。
すると、車両側のエアコンシステムから、真空状態になるまでエアコンガスとオイルを吸い上げ、780R内にて回収したガスとオイルをろ過する。さらにガスやオイル内に含まれる汚れや不純物を取り除き、車両側に戻す。
その際、劣化&消費した分のガス&オイル量を補充してくれるから、メーカー&車種ごとに設定されている規定値にシッカリ充填されることで、エアコンシステム内をクリーンにするだけでなく、冷風の効きを最大限まで引き出す効果があるのである。
この780Rは、スイッチオンしてしまえば、エンジンをかけずに全ての作業を全自動でやってくれるため、完了までの間にほかの作業を進められるという利点もある(全自動がゆえに人為的トラブルも皆無)。
しかもガス漏れなどの異常を途中で検知すれば自動で作業をストップしてどの作業過程でエラーが発生したかをブザー音と本体上側のランプで確認することができるという優れものだ。ちなみに一回の作業で早くて30分、遅くて1時間半程度という。
この作業を行えば、ガスやオイルの劣化による機能低下を防ぎ、規定量の再充填により冷風の能力が復活し、同時にエアコン配管内を循環している異物、不純物を取り除くことができるから、後のトラブルを未然に防ぐことが可能になるというのが最大のメリット=納車前にこうした作業が行なわれているBCD車両の安心感が一段と増す。
ちなみにBCDでは、こうしたエアコンガスのチェック&ガス充填の個別対応をエアコンメンテナンスの一環として作業工賃1万2000円で行っているという(補充ガスの代金は別途必要)から、気になる方は確認してみるといいだろう。
エアコンガスというのは、その構造上どうしても抜けてしまうと言われており、さすがに毎年とは言わずとも、例えば車検ごと、もしくは5年に一度程度は確認が必要と言われている。
点検項目として必要とされているエンジンオイルほどの交換サイクルは必要なく、最低でも5年に一度程度行えばいい保守点検の一つである。
ちなみにこの780Rという機種には、自動リークの検出機能があり異常を検知すると途中で作業が止まると先に記したが、逆にいえば、「どこかに漏れがあるかも?」と不調の理由がわからず疑わしい車両には、この機能を利用し、あえて作業を行うことで漏れの確証が得られるという効果もある。
いずれにしても、エアコンシステムの保守点検は、酷暑になる時代だからこそ、そして絶対的容量の大きいエアコンを装備しているアメ車だからこそ必要であり、やれば確実に効果が体感できるのである。